デザイナー / 中国出身
YUEQI QI ユェチ・チ
Q1.先日のイベントはいかがでしたか?印象に残っていることがあれば教えてください。
最高でした。音楽イベントをすることが目的でしたが、意味のあるかたちで洋服を披露する方法を見つける必要がありました。従来のランウェイの構造を打ち破るものを。そこで、私たちは「ネオリアルランウェイ」と呼んできたものをすることにしたんです。まず、モデルは、来場者が会場に着く頃に人ごみに散らばっていきました。表参道駅から出発して、道路を渡って、会場に入る。モデルと鑑賞者という関係はなくなり、第4の壁は崩壊しました。私のお気に入りの瞬間は、YUEQI QI のフェイスマスクをつけていたお客さんが、モデルと一緒に歩いて、自分たちもショーの一部であったことに気づき二度見していた時です。
Q2.東京でのイベントを開催した理由は?
私たちにとって、東京はすごく特別な街だからです。前回(東京で開催した)ファッションショーに満足していたし、同じチームでその勢いを継続させたかった。日本の YUEQI QI のお客さんは、私たちがやっていることを本当に理解していると感じます。みんなと会って、知り合えるイベントを作りたかったんです。ものすごく彼女たちに感謝しています。
Q3.コレクションのテーマについても教えてください。
コレクションのタイトルは、「シリコーン・シースケイプ」。デジタルのフロンティアから影響を受けて、貝殻や海をはじめ、今年のAIからの膨大な引用からインスピレーションを得ました。このコレクションを生んだ中心となる問いというのは、「シリコーン・シーシェル(貝殻)は自然のシーシェルよりも美しいのか?」というもの。人工知能には嘘やごまかし、捏造といった要素があります。もし私たちがそうした部分に麻痺してしまった場合、美しさをその本質から認識して、その文脈から切り離すことができるのかについて考えたんです。
Q4.モデルはストリートキャスティングされたかと思いますが、どのように選びましたか?
キャスティングでは、それぞれの個性の多様性にフォーカスしました。古くからのお決まりやスタンダードなビューティに厳格に従うことはなく、アーティストやミュージシャン、クリエイター、ビジョナリーたちを選びました。モデルの一部は、全シーズンから継続して登場してもらったり、友達であったり、プロダクションチームからも起用しています。
Q5.演奏したアーティストたちについてもどのように選んだか教えてください。
プロジェクトのもともとのインスピレーションは、東京で出会ったミュージシャンたちの音楽への愛情をキャプチャーし、共有することでした。その目的は、私に影響を与えてくれた人々をたくさん選ぶことで達成することができました。Thomas Lamb (トーマス・ラム) は私の夫であり、彼の音楽が好きだから選びました。Jesus Weekend (ジーザス・ウィーケンド)、Riki Hidaka (日高理樹)、Jan Urila Sas (ヤン・ユリラ・サス)、そしてKosei Terunuma (照沼光星) は、音楽の喜びを体現している人たち。私の親しい友人であり、夫とよくコラボレーションしており、私たちの結婚式のゲストでもあります。 Phew (フュー) については、私たちと仲が良く、日本の音楽に精通している Stereo Records Hiroshima(ステレオレコーズ広島) のGodbird(ゴッドバード) におすすめのミュージシャンを聞いたところ、教えてもらいました。彼女は生まれながら伝説的な存在です。最初は彼女の音楽に詳しいわけではありませんでしたが、聞いてみたら圧倒されました。彼女の初期のパンクバンドAunt Sally (アーント・サリー) から、坂本龍一がプロデュースした最初のソロプロジェクト、最新のリリースである「New Decade」まで、すべてが素晴らしいです。彼女は本当にインスピレーションにあふれた女性で、普遍的な存在です。
Q6.東京に来るのは何度目ですか?東京で思い出に残っていることがあれば教えてください。
数えるのが難しいくらいです。8歳の時に家族旅行で訪れて、2017年にも夫と交際している時に何回かきています。もっとも記憶に残っている瞬間は、ここで夫と出会い、結婚し、東京で最初となるファッションショーを開催した時です。子供の頃、ファッションの学生だった時、そして自分のブランドのデザイナーとしての旅行を思い返すと、夢がかなったという最高の気分になります。
Q7.東京のお気に入りのスポットは?
日本のカレーが本当に大好きなんです。「GHEE (原宿の伝説的なカレーショップ)」派生のカレー屋さんでいくつかよくいっていましたが、多くのお店は残念ながら、なくなってしまったようです。最近は、濃厚な日本のカレーを楽しんでます。お気に入りは、神保町の「Bondee」です。仲良しの水原佑果が連れて行ってくれました。すごく良いカレーです。去年の神田カレーグランプリを受賞した「MAJICURRY」もすごく良かったですね。アートブックを買い物しながらカレーを楽しむことができるのが気に入っています。
Q8.日本と中国のファッションの違いについてどう思いますか?
私はいつだって、どんなシーンにいてもアウトサイダー(部外者)であるように感じていましたが、日本と中国のファッションの伝わり方についてはいくつか大きな違いがあると思っています。近代史において、日本は中国よりも早く海外との貿易を始めていたため、20世紀の中期には、日本では西洋から多くの影響を受けていました。中国は、多くの少数民族と言語を持つ非常に多様な国です。私は中国の南部、広州出身です。上海、雲南、東北と比べても、非常に特異な場所です。本当に違う国のように感じるぐらい。もちろん、日本の都市もそれぞれ違いますが、日本ははるかに小さく、新幹線が早くからあったため、中国よりも均質化されているように感じます。もうひとつの興味深いポイントは、中国では中古品の輸入が非常に難しいことです。そのため、中国のファッションには西洋のヴィンテージの影響がはるかに少ないんです。
Q9.普段インスピレーションはどう見つけていますか?また見つけるために心がけていることはありますか?
インスピレーションが沸くために何かするというような特別な儀式はありません。心を開き、物事を見ることを意識的に努力していて、インスピレーションが現れたときに気づけるようにしています。アートブックとレコードを集めるのが好きで、確かにそれからはインスピレーションを豊富にもらっています。
Q10.YUEQI QIらしさとは?
私自身のコンセプトは幻想的であることだと思っていますが、ブランドの一貫性というのは、結果ではなく、そのアプローチです。
Q11.ブランドをやっていて、最大の喜びは?
ブランドをやっていく上で、最大の喜びは、新しい人たちと出会い、コラボレーションすることです。それと、金曜日に麻雀をすることも。