「現実の出来事に対する視点を記録する」という写真の本質を突き詰め、コンピュータによる合成加工などに頼ることなく、グラフィカルな世界を表現している。ストリートを映し出すことを出発点とし、これまで自身の周囲におけるリアリティを独自の視点で切り、かつての東松照明や植田正治、森山大道らがそこに存在する空気やダイナミズムを切り取ったように、 一貫して自らを取り巻く世界に存在する真実やその痕跡を重視して映し出している。
本展のテーマは「数字」。人類は古くから数字を用い、他者との関わりを築いており、言葉が通じない状況でも意思を伝えることができる。一方、それら記号は、時に人々を縛り付けるという逆説的な意味を持ち合わせている。資本主義社会においても、記号として用いられることで価値を有していた数字が、ラベルとして意味づけされることで、 本来の価値が埋没してしまう事に注目した。
また現在の写真表現は、複製可能性や印刷等の特性に目が向けられ、写真が持つ本質的価値や表現が薄れているのではないかと、本質的価値の再定義を試みる。街に存在する数字を写真という行為で切り取り、内包する意味を昇華させ、新たな生命を宿すという事は、小見山峻の考える、現在の正統な写真を表現といえるだろう。小見山峻の世界観が体感できる特別な機会に足を運んでみては?