本コレクションのテーマは、「HEROES」。価値観や重要性、可能性を限りなく追求する MARC JACOBS は、さらなる美しさとクラフトの概念を発展させている。イギリスのロックシーンを牽引してきた Vivienne Westwood にオマージュを捧げ、抑制された自由と熱狂的なエネルギーで現実の生き様について考えることで、過去のヒーローたち、そして今の若いヒーローたちへ向けたメッセージを落とし込んだ。
コレクションには、複雑なレイヤードやつぎはぎしたようなアイテムが登場。体にフィットしたボディースーツからボリューミーなアウターやスカートまで幅広いシルエットを展開し、緩急をつけた。ファーストルックで登場したのは、全体にラインストーンがあしらわれたショート丈のジャケットとスカートのセットアップ。スカートは、同素材のジャケットをリメイクしたようなデザインで、袖部分をギュッと縛ったようなディテールが新しい。アクセサリーはレザーグローブとパールのイヤリング、ネックレスを合わせ、パンクの中にエレガンスの要素をプラスした。
テーラードのコートは、モノトーンでシンプルながらもバックの大胆なスリットや、メタリック、ネオンカラーのブーツを合わせることで、上品になりすぎないコーディネートが完成した。また、グレートーンのニットにブラックのロングスカートというベーシックなアイテムを合わせたルックは、90年代イギリスのミニマリズムファッションを想像させ、時代によって移り変わってきたストリートスタイルを表しているかのようだ。
Vivienne Westwood の1985年春夏コレクション「Mini Crini」で用いられたドット柄は、本コレクションの後半に登場。ロングトレーンが印象的なドレスは、ボリューミーなダウン素材で MARC JACOBS らしい不協和的なアイテムに仕上げられた。足元を飾ったのは、細身の厚底ブーツ。1993年に発表された、Vivienne Westwood の伝説的シューズ 「Super Elevated Gillie (スーパー・エレベイテッド・ギリー)」を彷彿とさせるようなドラマティックなブーツが登場し、コーディネートをよりパンクに仕上げた。
「ファッションは人生を豊かにしてくれるものであり、人が人のためにできる素敵で寛大なことだと思う」。Vivienne Westwood が残したこの言葉、そしてパンクな精神は、MARC JACOBS や新たな世代に脈々と受け継がれていくことだろう。
さらに会場には、VOGUE 編集長の Anna Wintour (アナ・ウィンター) やデザイナーの Anna Sui (アナ・スイ)、モデルの Emily Ratajkowski (エミリー・ラタコウスキー) など豪華なセレブリティが登場し、MARC JACOBS による愛に満ちたファッションショーを楽しんだ。