CALM & PUNK GALLERY では約2年ぶりとなる今回の個展では、約1mの大型陶器作品の他、立体作品と平面作品を展示。〈滋賀県立陶芸の森〉に4ヶ月間にわたって滞在し、東京で目にしている光景や、その環境下で巡る思考、気のおける友人などから隔離された中で、陶芸という技法・素材と徹底的に向き合った作品たちが並ぶ。
もともと頭の中にあるイメージを寸分の狂いなく、画面をコントールして描き出すことで作品を作り出してきた ancco。粘土を時間と愛情をかけて成形し、窯に入れて焼き上げる過程を通して、陶芸というのはこれまで扱ってきた素材のようには彼女の統制を受けないことを知った彼女にとって、まさに新境地といえる作品が仕上がった。
「陶芸は理想を良くも悪くも打ち消してくる。そもそも強迫観念がつよく、こうでなければならないという気持ちで常にがんじがらめになっている私にとってそれを受けいれることは最初は困難だった。受け入れることの連続。それは自分を受け入れていくことにとても似ていた」
「子を持つ適齢期と言われる年齢に自分が近づいたことで心の隅に置いておいた気持ちに目を向けるようになった。未だに自分のことで、毎日を生きるのに精一杯な自分が、自分の無力さを受け入れながら日々駆け抜ける重い鎖のついたおしゃぶりを咥えた自分自身を作ったのかもしれない」
展示のタイトルにある「Baby.zip」の zip は圧縮されたファイルを示す拡張子。大きな赤ちゃん( = ancco) の中にあった感情が解凍されて展示されている本展、是非足を運んでほしい。
